麦畑を守り、からだを想う。──大麦工房ロアが届ける、美しい循環

2026年07月03日

株式会社大麦工房ロア 代表取締役
浅沼 誠司

<PROFILE> 浅沼 誠司(あさぬま せいじ) 株式会社大麦工房ロア 代表取締役


栃木県足利市に本社を構える株式会社大麦工房ロア代表取締役。早稲田大学卒業後、北海道の六花亭製菓で修行。1995年、前身会社である株式会社エイ・エム・シー・ロアに入社し、1997年に「大麦ダクワーズ」を開発。2009年、株式会社エイ・エム・シー・ロアと株式会社大麦工房を合併し、株式会社大麦工房ロアを設立、代表取締役に就任。
大麦ダクワーズをはじめ、大麦マカロン、大麦栗テリーヌ、焙煎麦めし、健康食品など、大麦を使った菓子・食品を幅広く展開。地元足利市の契約農家による大麦を中心に、大麦の栽培、加工、菓子製造、販売までを一貫して手がけている。

株式会社大麦工房ロア

〒326-0005 栃木県足利市大月町3-1

TEL:0120-37-4458(平日 9:00~17:30)

https://oomugi.co.jp/

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5月から6月にかけて、足利の風景は黄金色に染まる。
麦秋。
一面に広がる麦畑は、ただ美しいだけではない。そこには、この土地で人が耕し、種をまき、守ってきた時間がある。
大麦工房ロアの歩みは、その風景と深く結びついている。
小麦を使わない大麦のお菓子。
足利産大麦へのこだわり。
地元農家との信頼関係。
社員も関わる耕作放棄地の再生。
そして、「おおむぎ美人」に象徴される、からだの内側から日々を整える商品づくり。
大麦工房ロアが届けているのは、お菓子だけではない。
土地を守り、食べる人のからだを想い、地域の風景を未来へつないでいく。

そこに、美人協会が見つめたい“美しさ”がある。

Q. 大麦のお菓子が生まれた原点を教えてください。

私は中学生の頃から、家業を手伝っていました。
お菓子づくりや商いは、子どもの頃から身近にあるものでした。
大学を卒業した後は、北海道の六花亭製菓で修行をさせていただきました。その後、栃木に戻り、前身会社に入りました。
大きなきっかけになったのは、足利から東京へ向かう東武伊勢崎線の車窓から見た麦畑の風景です。5月から6月頃になると、福居駅を過ぎたあたりから、一面に麦畑が広がります。その風景を見ながら、大麦でお菓子ができないだろうかと考えるようになりました。
最初に出会ったのが、大麦を焙煎して粉にした「麦こがし」です。そこから、カステラ、マドレーヌ、ブルトンヌなど、いろいろなお菓子を試しました。
その中で一番相性がよかったのが、ダクワーズでした。メレンゲの生地は、大麦の香ばしさを邪魔しない。一口目で大麦の風味が立ち、食感や口溶け、後味もよかった。
そうして1997年11月に生まれたのが、「大麦ダクワーズ」です。
ただ、そこまでの道のりは簡単ではありませんでした。大麦は小麦のように、お菓子材料として一般的に流通しているものではありません。粒の大麦を精麦し、焙煎し、粉にするところから、自分たちで道を探していく必要がありました。
でも、あの麦畑の風景がありました。
この土地の大麦を使って、足利らしいお菓子をつくりたい。
その思いが、大麦ダクワーズの原点です。

Q. 足利産大麦へのこだわりについて教えてください。

最初の頃は、既製品の麦こがしを使っていました。
でも既製品には、いろいろな産地の大麦がブレンドされています。
やはり、故郷の大麦だけを使いたい。
足利の大麦でお菓子をつくりたい。
そう考えるようになりました。
その時に力を貸してくださったのが、長谷川農場さんです。もともと苺を通じてお付き合いがあり、二条大麦を分けていただけることになりました。
ただ、それを麦こがしにするには、精麦し、焙煎し、粉砕しなければなりません。当時、それを引き受けてくれるところはなかなかありませんでした。
それなら自分たちでやろう、と。
長谷川農場さんに通い、精米機を借り、見よう見まねで精麦に挑戦しました。そうして、100%足利産、二条大麦100%の麦こがしができました。
そこから、大麦ダクワーズは本当の意味で「足利のお菓子」になったのだと思います。
大麦ダクワーズは、ただ大麦を使った焼き菓子ではありません。
足利の麦畑の風景、地元農家さんの力、そして大麦の可能性が重なって生まれたお菓子です。

Q. 地元農家さんとの関係について教えてください。

私たちはお菓子を作る会社ですが、原料である大麦がなければ何も始まりません。
大麦は、一般的なお菓子材料とは違います。小麦のように簡単に手に入り、すぐに使えるものではありませんでした。だからこそ、地元農家さんとの関係はとても大切でした。
農家さんが大麦を育てる。
私たちがそれを加工し、お菓子や食品にする。
そして、お客様に届ける。
この流れがつながって、初めて大麦の価値が社会に届きます。
ロアでは、大麦ダクワーズのほかにも、大麦マカロン、大麦栗テリーヌ、焙煎麦めし、健康食品など、さまざまな商品を作っています。大麦をお菓子だけで終わらせず、日々の食卓や健康習慣にも広げていきたいと考えています。
大麦には、まだまだ可能性があります。
麦ごはんとして食べるだけでなく、粉にして、お菓子、パン、麺、健康食品などに活かしていく。そうすることで、大麦の価値はもっと広がっていくと思っています。

Q. 耕作放棄地と大麦工房アグリの取り組みについて教えてください。

近年、農家さんの高齢化もあり、耕作放棄地が増えています。昔は田畑だった場所が荒れていく。それは、土地が使われなくなるだけではなく、そこにあった風景が失われていくことでもあります。
私たちは、地元への恩返しの気持ちも込めて、農業生産会社である株式会社大麦工房アグリを設立しました。そして、耕作放棄地を大麦で再生する取り組みを進めています。
普段は大麦ダクワーズを作っている社員も、交代で農作業に従事します。今回もお話ししたように、社員総出で耕作放棄地の開墾にも取り組んできました。
荒れてしまった農地を耕し、大麦を育てる。
そして収穫した大麦を、また自分たちの手でお菓子にする。
土を耕すところから、お客様に届くところまでを自分たちで見て、触れて、感じることには大きな意味があります。
私たちは、商品を売るためだけに大麦を使っているわけではありません。
麦畑の景色を守りつづけたい。
その思いが、事業の根本にあります。
お菓子づくりと農業は、別々のものではありません。
大麦を通じて、土地と人と商品がつながっているのだと思います。

Q. 「おおむぎ美人」など、美人にまつわる商品について教えてください。

ロアには、「スーパーおおむぎ美人」や「おおむぎ美人乳酸菌プラス」といった商品があります。
大麦は、食物繊維などの健康価値が注目されている食材です。近年は、腸内環境や日々の健康習慣との関係でも関心が高まっています。
ただ、健康によいと言われるものでも、おいしくなければ続きません。反対に、おいしいだけでも、毎日の習慣にはなりにくい。
だからこそ、私たちは「おいしさ」と「健康価値」の両方を大切にしています。
「美人」という名前には、外側を飾るだけではない美しさへの思いがあります。日々の食生活を整えること。からだの内側を大切にすること。無理なく、おいしく続けられること。
その積み重ねの先に、健やかさや美しさがあるのだと思います。
大麦ダクワーズのようなスイーツも、焙煎麦めしのような食品も、おおむぎ美人のような健康習慣の商品も、根っこは同じです。
大麦の可能性を、暮らしの中に届けたい。
それが私たちの商品づくりです。

Q. 浅沼社長にとって、「美しさ」「美」とはどのようなものでしょうか。

美しさというと、見た目の華やかさを思い浮かべる方も多いと思います。もちろん、お菓子である以上、見た目の美しさやおいしさは大切です。
ただ、私にとっての美しさは、それだけではありません。
一面に広がる麦畑の景色。
農家さんが守ってきた土地。
そこから生まれた大麦を、お菓子や食品にしてお客様へ届けること。
食べた人が喜んでくださること。
そして、その喜びがまた次の麦畑につながっていくこと。
そういう循環の中に、美しさがあると思っています。
商品は、ただ形がきれいであればいいわけではありません。
誰が、どんな思いで育てた大麦なのか。
なぜこの土地で作るのか。
その商品が、誰の暮らしを少し豊かにするのか。
そこまで含めて、価値になるのだと思います。
私たちにとっての美しさは、麦畑の景色を守ることでもあります。
人のからだを思うことでもあります。
地域の農業を次の世代へつなぐことでもあります。
大麦を通じて、そうした美しさを届けていきたいです。

Q. 今後の展望を教えてください。

大麦には、まだまだ大きな可能性があります。
日本では、戦後の食生活の変化の中で、大麦が家庭から少しずつ遠ざかっていきました。けれど、大麦は昔から日本人の食を支えてきた穀物です。
その価値を、もう一度、現代の暮らしに合う形で届けたいと考えています。
大麦ダクワーズのようなお菓子だけではなく、麦ごはん、麺、パン、健康食品など、さまざまな分野に広げていくことができます。
大麦で商品化できないものはない。
そう言えるところまで、大麦の可能性を広げていきたい。
それが、日本人の健康を支え、大麦市場の再構築にもつながっていくと考えています。
私たちの経営理念は、「大麦は地球を救う」です。
大きな言葉に聞こえるかもしれません。
でも、大麦を育てることで農地が守られ、耕作放棄地が再生され、食べる人の健康にもつながっていく。
その一つひとつは、小さなことかもしれません。
けれど、その積み重ねが、社会を少しずつ良くしていくと信じています。


大麦工房ロアがつくっているのは、ただのお菓子ではない。
一枚の大麦ダクワーズの向こうに、足利の麦畑がある。
農家の営みがある。
社員たちが耕した土地がある。
そして、食べる人のからだを想う気持ちがある。
美しさとは、誰かを飾ることだけではない。
土地を守ること。
からだを思うこと。
未来へ、風景を手渡すこと。
大麦工房ロアの大麦スイーツには、そんな美しさが宿っている。

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